こんにちは。キャッシュレス推進ブロガーのゆきち(@yuki_one2)です。
僕は22歳から30歳までは、地方公務員の消防士をやっていました。
公務員というのはご存知の通り「信用」が厚く、銀行からはたくさんの融資を受けることができます。
そして世の中で一番使われている融資が「住宅ローン」でしょう。
じつは僕、退職間際に住宅ローンを契約したのですが、融資を受ける直前で退職がバレて5,000万円の融資がパァになりました。
もう契約した住宅は95%出来上がっています。引っ越し日も決まり、家電も買い揃えました。
それが「パァ」です。
今考えただけで動悸がします。
…さて僕はこの後どうなったのでしょうか?
この結果を言う前にみんなには知っておいて欲しいことがあります。
今までに扱ったことのない大きなお金が動いています。
「バレないだろう」という憶測は大変危険です。
退職する予定があるなら直前に住宅ローンは絶対に組んではいけません。
住宅ローンはもらうまで絶対に退職してはいけない理由
まずは僕が住宅ローンを契約するまでの経緯を振り返ります。
住宅ローンを組むまで
誕生日を迎え30歳となったその年、僕はもう消防士の退職を決めていました。退職理由は「自分で事業を起こしたい」と思ったからです。
そうなるととりあえず自営業という扱いになり、公務員の圧倒的「信用」をなくすことはわかっていました。
そこで考えたのが『退職までに住宅ローンを組もう』ということでした。
この考え自体が非常に甘いのですが、この時はマイホームはいつか絶対持ちたいという思いがありました。
おそらく公務員の今を逃したら『一生住宅ローンを組めないかもしれない』そんな思いがあったのです。
審査に対しての思い込み…
いざ各銀行にあたってみると当然反応は良く、すぐに融資を組んでくれそうな銀行を見つけることができました。
銀行から融資を受けるにはまず「事前審査」(申込者の返済能力などを短期間に判断する簡易的な審査)というのがあって、最初にこの審査を通る必要がありました。
これは1週間程度で結果が出ます。当然通過です。
その次がいよいよ「本審査」です。
本審査ではより詳細に返済能力や健康状態などを調査するので、提出書類もかなり多く必要になってきます。
当時の自分の考えとしてはこの「本審査」さえ通過すれば、あとは〝振り込まれるのを待つだけ〟なのだと思っていました。
しかしここに大きな間違いがあり、そんな事も知らない僕は、本審査を通過し着々と新居の構想を練っていくのでした。
退職がバレるタイミング
銀行が「申込者が退職した」と判断できるのはいつなのでしょうか?
それは「保険証」を確認するタイミングです。
中には直接職場に連絡し、申込者が本当に在籍しているかの確認を取る場合もありますが、会社名が記載されている保険証を確認するのが一番手っ取り早いです。
僕もそれはわかっていて、本審査でもしっかりと保険証を確認されました。
『これでもう退職しても大丈夫』
本審査後、そう思い融資実行前に公務員を退職してしまうのでした。
住宅ローン契約
本審査が完了したからといって、すぐにお金が振り込まれる訳ではありません。
審査が完了してからハウスメーカーは動き出します。
つまり実際に銀行からお金が振り込まれるのは、審査を通過してからかなり期間が経過しています。
僕が実際に「本審査」を通過したのが9月で、家が完成したのが5月。
つまり本当にお金が振り込まれるまでには8ヶ月くらいかかるのです。
完成した家を担保にするため融資は完成後に始まります。
そして僕はここで大きな間違いに気付きます。
本審査も完了しいよいよ振込みがされると思っていたところ、「住宅ローン契約」というのがあることを銀行から知らされます。
え?まだ審査あるの!?
そうなんです。9月に完了した本審査が最後ではなく、融資を受ける直前にも最後の確認作業が残っているんです。
これを知らなかった僕は大変なことになりました。
- すでに住宅は完成していて後には絶対に戻れない。
- 退職し自営業なのでローンの組み直しなんて絶対できない。
- 住宅の費用は5000万円。
最悪の場合、銀行からの融資はキャンセルになりハウスメーカーにお金を払えない状態になります。
そうなるとハウスメーカーから訴訟を起こされ、財産はすべて抑えられ借金だけが残るようになります。
もう最悪です。
そして先ほども言った通り、退職の判断ができるのは「保険証」を確認した時です。
『大丈夫…最後に保険証の確認はないはずだ…』
そう思いながら、住宅ローン契約の日を僕は待っていました。
そうしてある日、銀行から住宅ローン契約についての書類が送られ、その書類にはこう書かれていました。
【契約日に必要なもの】
・住民票
・印鑑証明
・保険証
・…
・…
「 保険証 」
住宅ローンが組めない…
頭が真っ白になりました。
『あ…すべて終わった』
本気でそう思いました。
こうなると人は冷静でいられなくなります。
24時間何もしていても、常に緊張しているのがわかりました。
『ローンが組めないと人生が終わる』
そんな思いで何とかして隠し通せないか、本気で考えます。
しかしそんな都合のいい答えなんかなく、考えた結果ここで自分が取れる行動は2つだと思いました。
- 契約当日までシラを切り通す。
- すぐに電話で退職したことを銀行に知らせる。
②はつまり諦めるということです。
①の場合は契約日に会社の保険証ではなく「国保」となった新しい保険証を持っていき、確認を「スルー」してもらうのを願うということです。
しかしこの場合、バレたら銀行にも多大な迷惑がかかるし、なんといっても〝嘘を突き通す〟という後ろめたさが半端ないです。
ずっと考えに考え、親にも相談しました。そして出した結果は
〝退職を白状し、正直に向き合う〟
書類に「保険証」と記載がある時点で、どう考えても退職は隠せないです。
銀行に退職を報告
今でも忘れません。銀行の融資担当者に電話したことを。
僕『すいません。住宅ローンでお願いしている一條ですが、担当の〇〇さんお願いします。』
…
担当者『どうも一條さん。お世話になります!どうされました?』(電話越しでも笑顔が伝わる明るい声)
僕『住宅ローン契約についてなんですけど、持っていくものに保険証がありした。じつは退職してしまいまして、保険証が変わりました。』
(本来ならすぐに謝罪から入るべきなのですが、そう切り出すことはできませんでした)
担当者『え?えーと職場の部署が変わったのですか?』
(事実を飲み込めない様子で、退職というのを信じられない声)
僕『申し訳ありません。公務員を辞めてしまいました。』
担当者『はい?もうお仕事されていないんですか?』
(さっきの明るい声とは一変、かなりの地声)
僕『その通りです。』
担当者『…』
(数秒の沈黙)
担当者『一條さん。これは本当にまずいですよ。審査からやり直しです。』
僕『はい。本当に申し訳ありません。』
担当者『転職ですか?今は大きい会社に勤められてるのですか?』
僕『すいません。自営業です。』
担当者『…』
担当者『まずもう現状の住宅ローンは失効になるでしょう。間違いなく。そして新しく審査からやり直しになりますが、それも厳しいでしょうね。』
一條『はい。わかりました。とりあえずもう一度考えます…』
担当者『はい。私の方でも少し整理してみます。』
銀行の担当者とはこういう会話をしました。
特に退職を報告した後の、低い声で『まずいですね』と言われたのは忘れません。
住宅ローンが破綻になることは覚悟していたのですが、やはりショックでした。
『この先5,000万円どうしよう…』
このことで頭がすべて覆われます。
住宅ローンどうするか…
とにかくどうしたらいいかわからない僕は、最初に親に相談しました。
前段階で今の状況を説明していたので、僕の現状は知ってくれています。
その上で銀行から融資を受けられないこと、5,000万円の支払いがあることを改めて相談しました。
…
30歳にしてめちゃくちゃ怒られました。
「何で退職するのに家なんて買うんだ。」「計画性がなさすぎる。もっと考えろ。」
まったくその通りです。
本当に自分が情けなくて、でもどうしようもない。自分の軽はずみな判断でたくさんの大人に迷惑をかけてしまっている。
あんなに悩んだのは人生で初めてです。
これまで親とは深い話なんてしたことがなくて、あれだけ言われたのも記憶の中では初めてのことでした。
また子供のように親に叱られている自分は本当に情けないです。小さいです。
何で『退職前に住宅ローンを組もう』と思ってしまったのか。
本当に甘かったです。
…
残った5,000万円は結果的に「祖母の遺産」とちょうど「父の退職金」が入るので、それでまかなえることになりました。
親には一生をかけて返済していきます。本当に感謝です。
最後に
実際にお金をもらいはじめる前に退職すると、僕のように大変なことになります。
『退職する前に住宅ローンを組みたい』という考えがそもそも甘いです。
銀行は収入の裏付けがあってお金を融資しています。
もらうまではもちろん、住宅ローンが始まってからも辞めてはいけないと思います。(僕が言っても説得力ありませんが)
僕のこの失敗を知ってもらい、みんなが今後「二の轍を踏む」ことのないようにしていただきたいです。
今思うと銀行にしっかり事前に話すことができて良かったです。
後のことを考えると本当に怖かったですが、正直に話して肩の荷が一気に降りました。
人は本来隠し事をしていたくないんですね。
『これからは真っ当に生きよう』と本当にそう思った出来事でした。